レーダ・LiDAR , インダストリ , 航空宇宙 AE83:VMEフォーエバー!

VME program image

VMEはリリースから40年以上もの年月が経過しているレガシーなバス技術ですが、防衛や航空宇宙の分野では現在も使用されており、その信頼性と堅牢性はこれまでの防衛、航空宇宙分野を支えてきた事に疑う余地はありません。現在は、VPXと呼ばれる次世代の組込みボード規格がリリースされていますが、ここでは何故VMEが引き続き使用されているのかという事に焦点を当てて説明します。

 

はじめに:

「Forever」という言葉は、未来のテクノロジについて議論するときに使用する様なかなり大胆な用語です。では「VME Forever」を宣言することはどういう意味があるのでしょうか?

過去10年間にVMEの将来に疑問を呈する記事が数多く発行されたにもかかわらず、今日でも出荷されているVMEボードの数量は相当なものです。現実に、VMEは健在であり前向きな未来があります。評論家の否定的見解にもかかわらず、長年にわたって大成功を収めてきたアーキテクチャには非常に多くの肯定的な側面があるため、今後も継続し続けること以外に予測することは困難です。もちろん、「Forever」は非常に長い時間を意味します。現実的に考えて、この議論の目的上、「Forever」とは、私たちが合理的に予測できる遠い未来であるとしましょう。これを仮に20年とします。

テクノロジの変化が絶え間なく加速している環境では、20年先を見据えることは困難に思えるかもしれません。そして、一般消費者向けの電子機器について話しているのであれば、それは意味が無い事であり当然却下されるでしょう。

20年後にVMEボードは存在するのか? その質問に対する答えは、「YES」です。

ただし、これはVMEが長年にわたって広く採用されてきた防衛および航空宇宙市場のことです。携帯電話のライフサイクルは数ヵ月強ですが、標準的な軍事計画では配備と維持に数年、場合によっては数十年かかります。これにより、防衛市場で何が起こるかを予測するのははるかに容易になります。確かに、VME市場が成長する可能性は低いでしょう。それは必然的に時間の経過とともに減少します。しかし、20年後も軍事組織はVMEを購入し、Abaco Systems社のようなメーカーはまだ製造しているのだろうか? その質問に対する答えは、「YES」です。

 

VMEの重要性:

なぜVMEが防衛および航空宇宙市場で依然として重要なのか?

多くの要因がありますが、根本的にできる限り変更や修正無くプログラムを「提供」し続ける必要があるということです。最も重要なことは常に、リスクを最小限に抑え、軽減し、緩和し、排除することです。

危機的な状況で自分の機器に絶対的な信頼を寄せる必要があるエンドユーザーから、究極の信頼性と性能を求めて努力するボードレベルのサプライヤやサプライチェーンまで、機器への信頼だけでなく、すべてを通じてパートナーシップへの信頼も必要です。ハードウェアとそれをサポートするソフトウェアの堅牢な信頼性に対する信頼は当然のことです。ただし、要件を実現する能力、長期的なコミットメント、明確に定義された開発戦略、テクノロジ挿入ロードマップなど、より幅広い意味合いがあります。これは、多くの場合、人間の安全を最終目標とするコミットメントを実現する能力に重点を置いたトータルパッケージです。

VMEは、このレベルの信頼とコミットメントで提供できる唯一のテクノロジではありませんが、絶対に安全な選択であり重要です。そのため、Abaco社ではVMEへの取り組みを通じてお客様をサポートすることをお約束します。 永遠に。

 

VPXの台頭:

VPX logoVPXはVMEと関連する標準規格であり、過去にcPCIやATCAが規格化されたのと同じように、VMEの代替と見なされてきた多くのスタンダードの1つです。従来の規格とVPXとの違いは、防衛および航空宇宙市場に実際に根付いており、VMEの完全に実行可能な代替手段であることです。少なくとも3つの重要なメリットがあります。

 

1.ファブリックベースの相互接続により、より高いパフォーマンスへの道を提供します

VMEはパラレルベースのバスに基づいていますが、速度が制限されておりボード間で大量のデータを移動する必要があるアプリケーションではボトルネックになる可能性があります。VPXは、ポイントツーポイントのファブリックベースのアーキテクチャであるため、このボトルネックを排除し、相互接続でVMEよりも高い柔軟性とパフォーマンスを提供します。

2.3U VPXはサイズに制約のあるプラットフォーム向けの実行可能なフォームファクタです

3U VMEフォームファクタ (160mm x 100mm) には背面I/Oがないため、ほとんどの堅牢な防衛および航空宇宙アプリケーションへの適用性は非常に低くなります。一方、3U VPXはリアI/Oピンを提供することでこの問題を解決し、現在ではスペースが非常に限られているUAVなどのアプリケーションで非常に人

気があります。

3.VMEと同じ物理的属性の多くを備えています

3Uと6U (160mm x 233mm) のオプションでボードサイズの同じ定義を維持することにより、VPXは6U VMEまたは3U cPCIと同じスペースにスロットを配置するのに適しており、どちらも防衛および航空宇宙用途で人気があります。

 

フォームファクタの類似性を示す6U VMEと6U VPXの比較:

6U VME & 6U VPX board

図は、6U VMEを使用する場合と3U VPXを使用する場合に、同じ機能を典型的なミッションコンピュータに実装する方法を示しています。どちらも実行可能なオプションですが、VPXソリューションはボード間ではるかに高い帯域幅を提供します。

では、なぜ誰もがVPXを選択しないのでしょうか? 繰り返しますが、VPXには考慮すべきことがたくさんあります。

6U VME vs 6U VPX configuration

  • 高パフォーマンス

高いパフォーマンスが得られるのはメリットのように思えますが、実際にはすべてのアプリケーションがボード間の高帯域幅通信を必要とするわけではありません。たとえば、ミサイル警報システムなどのアプリケーションは、「少量のデータで多くのことを処理する」必要があります。したがって、ファブリックベースの相互接続を採用しても、実質的にシステムの消費電力が増えるだけです。高速インターコネクトは、CPUに組み込まれているか外部スイッチに組み込まれているかにかかわらず、電力を大量に消費する傾向がありますがVMEはそうではありません。

  • リスク

ベンダーの観点から、VMEはVPXよりもリスクはありません。

Abaco社は10年ほど前からVPXボードを製造しており、その学習曲線は完全にVMEを上回りましたが、潜在顧客は同じようにそれを使用する状況では無いようです。プログラムには長いライフサイクルがあり、プログラムに取り組んで更新を検討しているチームは、おそらく何世紀にもわたるVMEの経験を積んでいます。

初めてVPXを採用することは大きな障壁になる可能性があり、プログラムの目標を達成するためにVPXのパフォーマンス上の利点が必要ない場合は、取るに足らないものになる可能性があります。

  • コスト

一般にVMEボードは設計上VPXボードよりも複雑ではない傾向があるため、ハードウェアの更新を検討する際に非常に費用対効果の高いオプションを提供します。しかし、インテグレータのコストを左右するのはボードだけではありません。これは、バックプレーン、電源、シャーシのプログラム全体のコストであり、おそらく最も重要なのは必要なソフトウェアへの投資です。

Tradeoff

上記のすべてを考慮に入れると、最近では「性能は十分でより速く、より低コストである」ことがより優先されているため、多くのミリタリプログラムは依然としてVMEを使用することを選択しています。これは主に従来のアップグレード用ですが、商業的に意味のある新規プログラム用もあります。

 

 

VMEの実行可能性を維持する:

VMEの重要な成功要因は、市場の要求に対応するための時間の経過に伴う進化です。 主要なAbaco社のマイルストーンの履歴を下図に示します。

VME specification

バス帯域幅の改善と並行して、CPUおよびI/Oテクノロジの開発も大幅に進んでいます。初期の頃は、SCSIおよびイーサネット機能を追加するには別のボードが必要でしたが、現在のVMEボードは、Intel やNXPなどの最新のシステムオンチップ(SoC) デバイスをサポートし、CPU、メモリを備えた単一のデバイスを提供します。 コントローラとI/Oがすべて1つに統合されました。初期のVMEボードよりも高い処理能力を備えたスマートフォンを使用するようになった現代のハイテク時代においても、VMEには依然として果たすべき役割があります。VMEの選択につながる3つの主な理由は次のとおりです。

  •  ミリタリプログラムの延命

多くの場合、プログラムの寿命は実際の計画よりもはるかに長くなります。機体及び車両などは、元々の「使用期限」が過ぎてからも長い間使用される傾向がある貴重な資産です。プラットフォームを中断せずにコアとなるVMEボードをアップグレードすることで、搭載機器にさらに数年を追加できることは、エンドユーザーに大きなコスト上のメリットをもたらします。

  •  パフォーマンスの向上

プログラムの寿命が延びるにつれて、新しい技術や新しい運用シナリオのニーズを満たすためにミッションが拡張されることがよくあります。 5~7年前のシングルボードコンピュータを更新してCPUのパフォーマンスを2倍にすると、これらのミッションの目的を達成できます。例えば、既存のディスプレイコンピュータに組込みトレーニング機能を追加することです。

  •  SWaP統合

サイズ、重量、電力の削減は、一般的にモジュールの小型化を想像しますが、VMEボードでここ5年ほどに普及したマルチコアテクノロジを使用して、複数の既存ボードの機能を1つのボードに圧縮するという方法もあります。これにより、既存のシャーシに空きスロットを残して機能を追加することができます。

 

プログラム寿命全体を考慮する:

プログラムの要件を完全に理解して最終決定し、製品を特定したら次の目標はプログラムの存続期間全体を管理することです。これには考慮すべき複数の側面があります。

  • 技術導入戦略

中断を最小限に抑えて新しいテクノロジを導入できることが、技術導入のすべてです。ベンダーは新しいボードを設計する際に、設計の容易さ、最低コスト、絶対最大性能などの要素に重点を置くかどうかを選択します。しかし、VMEの世界で最も成功しているのは新製品をシステムに導入する際に顧客が必要とする統合を最小限に抑えることに重点を置いている企業です。これは、既存システムのアップグレードを計画している場合に特に当てはまります。たとえば、Abaco社には何年も何世代にもわたってさかのぼるテクノロジ挿入ロードマップがあります。たとえば、PowerXtremeの堅牢なPowerPCのロードマップは1995年に策定され、10世代の製品を経た今でも強力な製品です。

PowerXtreme loadmap

 

20年にわたるAbaco社のPowerXtremeロードマップ:

テクノロジ挿入ロードマップの核心は、標準のハードウェアおよびソフトウェアインターフェイスを維持することです。基本的には、ピン配置とプログラミングAPIを同じに維持することです。または、少なくとも下位互換性を維持することです。ハードウェア設計者にとっての課題は、古い機能 (IDEなど) がなくなりサポートされなくなったときに、新しい機能 (SATAなど) を導入することです。キーとなるのは、前世代のピン配置を模倣するオプションとともに、新しい機能を提供するオプションを備えた非常に柔軟なピン配置スキームを用意することです。これは設計が複雑になり、実装が頭痛の種になる可能性があるため簡単ではありませんが、途中で1つまたは複数のテクノロジの更新が必要な長期的なプログラムをサポートする必要があります。

 

長く使える設計:

もう1つの重要なアプローチは、最初から長寿命で設計することです。これにより、必要な更新の回数を最小限に抑えることができます。これには、陳腐化とコンポーネントの寿命の問題を前もって考慮する必要があります。

コンポーネントは可能な限り、7年、10年、さらには15年の供給を約束する「エンベディッド」ロードマップを提供するサプライヤから選択できます。さらに、将来の供給を予測するためのアルゴリズムを持っているコンポーネントデータベースの専門家から情報を得ることができます。これを超えて、FPGAにプログラムされたIPに機能を実装することにより、コンポーネントの供給の寿命に関する不確実性を取り除くための特定の措置を講じることができます。

これにより、ベンダーはポータビリティを得ることができ、市場で入手可能な特定のハードウェアコンポーネントに依存しなくなります。そのような例の1つが、最新のボード設計に採用されているAbaco社のVivo VME Bridgeです。

このデバイスは、コアVMEテクノロジを実装するだけでなく、高速2eSST機能とハードウェアバイトスワッピングも管理します。これは、リトルエンディアンおよびビッグエンディアンのレガシーを持つシステムを更新するときにしばしば必要になります。

 

陳腐化管理戦略:

コンポーネントの陳腐化は避けられない事実です。ほとんどのコンポーネントは、短期間の商用利用向けに設計されており、消費者市場全体のごく一部を占める長期プログラム向けではありません。したがって、ベストデザインプラクティスを採用するだけでなく、よく考え抜かれた陳腐化管理戦略を持つことが重要です。部品表 (BOM) を継続的に監視することは不可欠ですが、適切な措置を講じることはさらに重要です。このアクションは、Last Time Buy (LTB) を実行するか、コンポーネントの必要性を取り除く再設計を試みることです。

このプロセスを通じてお客様を支援するために、Abaco社は製品ライフサイクル管理チームによって管理される一連の長期サポートサービスを開発しました。

  1. BOMモニタリング: コンポーネントのヘルスチェックを四半期ごとに定期的に実施し、陳腐化の問題を特定しLTBか再設計かにかかわらずアクションを提案します。
  2. 部品調達: 顧客からの資金調達と予測を利用して、LTBを引き受けることができます。
  3. コンポーネントの保管: LTBに続いて、コンポーネントは最先端の窒素貯蔵エリアに保管し、必要に応じて使用するためにコンポーネントを保存できます。
  4. テスト機器の保持: 生産または修理能力を維持するために必要なすべてのデータスキルと機器を保持します。

 

最先端の製品:

VMEの長所と短所を考慮し、長期的なサポート戦略を策定したらユーザーは製品を選択する必要があります。いくつかのベンダーはVMEを脇に置いており、一貫したVME製品ストリームを維持することの優先順位を下げていますが、最近リリースされた3つのVMEシングルボードコンピュータが示すように、Abaco社のようなベンダーは、VMEを戦略の中核部分として採用しています。

PPC11A

  • 空冷および伝導冷却オプション
  • Powerアーキテクチャ、T1042またはT2018 CPUオプション
  • 8GB DDR SDRAM、512MB フラッシュ、32GB SSD
  • デュアルPMC/XMCサイト
  • デュアルオンボードMIL-STD-1553チャンネル
  • Vivo FPGAベースのVMEインターフェイス

XVR19

  • 空冷および伝導冷却オプション
  • Intelアーキテクチャ、第7世代 Xeon E3-1505M v6
  • 32 GB DDR SDRAM、64 GB SSD
  • デュアルPMC/XMCサイト
  • Vivo FPGAベースのVMEインターフェイス

 

 

XVB603

  • 空冷
  • Intelアーキテクチャ、第7世代 Xeon E3-1505M v6
  • 16 GB DDR SDRAM、256 GB SSD
  • シングルPMC/XMCサイト
  • Vivo FPGAベースのVMEインターフェイス

 

 

 

まとめ:

VMEは何十年もの間、防衛および航空宇宙市場の組み込みコンピューティングに不可欠でした。これは、業界で最も知名度の高い多くのプログラムの中心です。VMEは特徴がよく知られており非常に信頼されています。したがって、これらのプログラムの拡張または更新のための頼りになるアーキテクチャであるだけではありません。特に、展開をより迅速に確認できる非常に費用対効果の高いオプションであるという理由だけでなく、他のアーキテクチャに対する利点を明確に活用する新しいプログラムの選択肢でもあります。

元のVMEアーキテクチャは、その存続期間中に大幅に強化され、最新かつ実行可能な状態に保たれています。現在、最新のシリコン技術、最新のI/O機能、および最新のストレージ機能の恩恵を受けています。長年にわたり、Abaco社のようなベンダーは、顧客が最小のコストとリスクでより高いレベルのパフォーマンスと機能を定期的に利用できるようにする頻繁な技術更新により、その関連性を確保する上で重要な役割を果たしてきました。

VME アーキテクチャに依存するプログラムの広範な展開ベースと、それらの運用が数十年にわたる性質を考えると、元請業者、システムインテグレーターおよびOEMサプライヤに精通し、信頼されており、また特定のアプリケーションに対するVME固有の利点を考えると、VMEが今後何年にもわたって重要な力を持ち続けることは明らかです。

Abaco社では、VMEの未来を手中に収めています。

FutureAhead

 


原文ドキュメント:Abaco Systems社

vme_forever_1.pdf

VME Forever!

 

関連製品

PPC11A:QorIQ T2081プロセッサ搭載 CPUボード(6U VME)

XVR16:Intel Core i7 プロセッサ搭載 CPUボード (6U VME)

XVR19:Intel Xeon プロセッサ搭載 CPUボード (6U VME)

 

Abaco Systems社について

Abaco Systems社は、30年以上前の英国Plessey Microsystems社がルーツとなる企業です。Plessey社はICS社とOctec社を買収してRadstone社となりました。2006年にRadstone社は、SBS社、VMIC社、Condor社などの組み込みコンピューティング企業を買収したGE Fanuc Embedded Systems社に買収されました。2015年にEmbedded Computing部門がVeritas Capital社に買収され、Abaco Systems社が誕生しました。更にAbaco Systems社は4DSP社を買収し、FPGAボードやAD/DA FMCモジュールのラインナップを拡充して組み込みシステムビジネスのリーダーとしてマーケットを牽引しています。Abaco Systems社の詳細については、www.abaco.comを参照してください。

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